それにしても米国大統領選挙で民主党のバイデン候補が優勢となってからドル安の勢いが続いています。トランプ政権では長期的にみるとドル高の流れでしたが、コロナショックで急激なドル高を見せ、そこからの戻しが一服したところでバイデンドル安が加速した感じでしょうか。
今後の見通しのコメントを見るとドル安の意見が主流ですが、思うようにいかないのが相場でもあり、ドル高の意見もないことはないです。それぞれの意見についてまとめてみました。
ドル安の意見
・コロナワクチンの登場で世界各国が来年のうちに正常化できるとの見方から、投資家は安全性が高いとみられる米国の資産に背を向け、米国以外の株式や債券、通貨に関心が移行(ウォールストリートジャーナル)
・FRBはゼロ金利解除のハードルを明確に引き上げたため、今後もドルの先高観は台頭しにくい。むしろ、米追加経済対策の与野党合意が見通せないことから、当面は米景気減速懸念によるドル安圧力が高まりやすいだろう。(ニッセイ基礎研究所)
・バイデン氏が掲げる公約のうち、増税はドル安材料(ニッセイ基礎研究所)
・米景気の回復がもたついて米長期金利が上昇せず、対中通商政策が穏健化するとみられることはドル安(特に対人民元)要因(野村証券)
・新型コロナ感染拡大に歯止めが掛からず、12月のFOMC会合では資産購入の拡充や長期化など追加緩和観測がさらに高まり、ドルの下値警戒感は続くとみている。(SMBC信託銀行)
・FRBがゼロ金利政策を続けることに加え、さらに今回の危機でアメリカは財政も日本以上に大幅に拡張しているので、期待インフレ率が上昇して、実質金利がマイナスとなっていることだ。そのため、日米実質金利差もアメリカのほうが低くその差は拡大している。さらに、米国は経常赤字国なので、通貨は売られやすいという基本的な構造がある。2~3年はドル安傾向が続くだろう。(東洋経済がJPモルガン・チェース銀行の方にインタビュー)
ドル高の意見
・年終盤はドル需要の高まりによってドル高に振れやすいという季節性もある(第4四半期にドル高となったのは過去10年で8回)(ニッセイ基礎研究所)
・米国の景気回復が頓挫しなければ全面的なドル安は回避されると予想。(野村証券)
・毎月5日、10日は輸入業者の決済のためのドル買い需要が多いため、仲値に向けてドル高が進みやすい。(単なる一般論)
民主党政権、共和党政権でドル高、ドル安基調がかわるのか
次期大統領と絡めると、トランプはナショナリズム、バイデンはグローバリズムなので、トランプだとドル買いへの関心が高くなり、バイデンだと他国通貨に関心が向かうとは聞きます。他には、共和党政権だとドル高基調、民主党政権だとドル安基調とも聞くことがあります。
大統領選挙とドル円の傾向についてまとめているサイト(大和ネクスト銀行 コラム「米大統領選「ドル円相場」のアノマリーを検証してみた !」)によると、2020年より前の
・過去9回の選挙年では 円安ドル高7回、円高ドル安2回
共和党候補が勝利すれば円安、民主党候補が勝利すれば円高になるというのが定説だが過去9回の選挙では共和党が5回、民主党が4回それぞれ勝利を収めているが、「円安ドル高7回、円高ドル安2回」という為替の動きであった。ただ、オバマ大統領の時は円高にならなかった。それは日銀の金融緩和や米国の質豪率改善が挙げられるとのこと。
・選挙翌年は 円安ドル高6回、円高ドル安3回
選挙年の翌年も同じ方向に動く傾向が多いが、これはバブル崩壊、プラザ合意、想定外のトランプ就任など、単なる二大政党のアノマリー以外の要素が大きいようです。
さて、そう考えると現在は次期大統領候補最有力は民主党のバイデン候補であり、定説通りドル安が進行中で、多くのアナリストもこの傾向は続くと予想しているのは、非常に順当な考えといえます。大ミラクルでトランプが逆転しない限り、この傾向は続きそうです。